深夜の火葬場、増幅する恐怖の音

何かがおかしい

夕暮れ。
公園の帰り道。
火葬場からだ。
微かな、音がする。

夜が深まる。
音は、大きくなる。
鼓動が、早まる。
闇に浮かぶ、窓ガラス。
ワシは、釘付けになる。

風は、止んだ。
街全体が、張り詰めておる。
あの、火葬場からだ。
不気味な音が、聞こえる。
誰かが、ワシを呼ぶ声か。
日に日に、声は大きくなる。
ガラスが、揺れる。
ワシの、胸が揺れる。
錯覚か。
いや。
確かに、聞こえる。

気づいてしまった

留守番電話の、赤いランプ。
汗ばむ手で、ボタンを押す。
震える指。
再生。

聞こえる。
子供らの、甲高い声。
笑い声。
叫び声。
「鬼だ!鬼!」
あの、石像に向かって。
「不気味な絵画」と、ワシが名付けた石像。
あそこから、響いておるのか。
この、毎晩の「恐怖の音」は。
息が、止まる。
頭の中が、真っ白に。

もう逃げられない

あの石像。
「不気味な絵画」。
そう、ワシが呼んだ。
子供らは、ただの石像だと思っておるのか。
いや。
あ奴らは知っておる。
あの石像が、音を増幅させることを。
ワシの恐怖を、増幅させることを。

夜の闇が、ワシを包む。
子供らの声が、また聞こえる。
笑い声。
叫び声。
まるで、ワシを嘲笑うかのように。
ワシは、もう逃げられん。
この家から。
この、恐怖から。

結末

夜明け前。
また、公園から声が聞こえる。
火葬場で、鬼ごっこか。
楽しそうな、笑い声。
大声。
石像に向かい、叫び続けておる。

「不気味な絵画」なんて。
あの石像に、ワシが名付けた。
馬鹿なことをした。
窓の外を見やる。
呆然と、立ち尽くす。
しかし。
今では、この笑い声も。
子供らの、足音も。
妙に、心地よく感じる。
頬が、緩む。
夜明けまで。
もう少し、我慢しよう。