立ち入り禁止、止まらぬ悲鳴

X月X日:始まり

夜が更け、家の中はいつもの静寂に包まれていた。
しかし、その静けさを突き破るように、遠くから微かな、それでいて耳に残る悲鳴のような声が聞こえてきた。

助けを求める声のようにも、あるいはただの風の唸りのようにも聞こえる。
漠然とした不安が胸の奥に広がるのを感じた。

家の外、庭の隅に立てた「立ち入り禁止の看板」が、月の光に不気味な影を落とし、風にカタカタと揺れている。
まるで、何かを招き入れているかのように思えた。

X月Y日:違和感

それから数日の間、あの「遠くの悲鳴」のような音は、毎晩のように私の耳に届いた。
それに加えて、家の周囲の空気が、時折びりびりと震えるような感覚がある。

屋上のフェンスも、風もないはずなのに、まるで何かがぶつかるようにガタガタと音を立てるのだ。

この不可解な現象が、私の神経を少しずつ蝕んでいく。
庭の隅に立てた「立ち入り禁止の看板」を見るたびに、その向こうに誰かが潜んでいるような、そんな錯覚に囚われる。
几帳面な私が、こんなにも落ち着かない夜を過ごすことになるなんて。

X月Z日:限界

今夜もまた、あの「遠くの悲鳴」が聞こえる。
もう、幻聴ではない。

確かにそこにある音だ。

家の周囲の空気は、これまで以上に強く震え、まるで何かがすぐそこにいるかのような気配がする。
「屋上のフェンス」が、ひどく耳障りな音を立てていた。
それは風の音ではない。
もっと、何か…。

私はもう、まともに眠れていない。
この家は、私を閉じ込める檻になったようだ。
このままでは、おかしくなってしまう。

もう、限界だ。
あの音…あの音の正体が…まさか…まさか…隣の…子供たちの…そう、秘密基地の…スピーカーの…悲鳴…え…?
私が…立てた…「立ち入り禁止の看板」…「屋上のフェンス」…あれが…まさか…

あは…あははは…

追記:発見者のメモ

この日記は、北条陽菜先生の自宅で発見された。どうやら、隣家の子供たちが秘密基地作りのために、屋根裏部屋を改造していた騒音に怯えていたようだ。

陽菜先生が設置したはずの「立ち入り禁止の看板」や「屋上のフェンス」は、皮肉にも子供たちの冒険心を掻き立て、秘密基地の守り神のような役割を果たしていたという。

「遠くの悲鳴」と先生が感じていた音は、子供たちが夜中に秘密基地用のスピーカーから流していた効果音と、風の音だったと判明。それを知った先生は、呆然としていたとのことだ。