深夜SA、精神を蝕む異音。

深夜の轟音、そして謎の解決

午前二時を過ぎた。携帯の画面が青白い光を放ち、無慈悲にその数字を告げる。二時十七分。もう何時間ここにいるのか、いや、何分なのか。時間の尺度そのものが捻じ曲がっているような、妙な感覚が全身を包む。まさに、深夜の時計の針に憑りつかれたかのような錯覚だ。カチ、カチ、カチ……。秒針の音が、まるで頭蓋骨の裏側で直接反響し、脳味噌を叩き続けているかのようだ。この錯覚のせいで、平衡感覚までおかしくなりそうだ。胃のあたりがむかむかする。ただでさえ睡眠不足で目の奥がジンジンするのに、この時間感覚の狂いが拍車をかける。

高速道路のサービスエリアは、深夜になると昼間の喧騒が嘘のように静まり返る。煌々と光る蛍光灯の白い光が、かえって全てを不気味に、人工的に照らし出している。床のワックスの匂いと、微かに残る排気ガスの臭いが混じり合い、鼻腔を刺激する。人気のない通路に、自分の足音だけが空虚に響き、それがまた時間の流れを曖昧にさせる。

その時だった。ズズズン……と、腹の底に響くような、低い唸り声が聞こえてきた。地鳴りか? いや、もっと規則的で、だが不規則に、執拗に繰り返される。まるで巨大な獣が地下で呻いているかのような、重苦しい振動。コンクリートの床を這い、壁を震わせるような鈍い振動が、足元からじわりと伝わってくる。なんだこれ。俺の心臓が、ドクン、と大きく跳ねた。脈拍が速くなるのが分かる。この深夜の、この不穏な音。昼間なら気にも留めないだろうが、この時間感覚の狂いが、俺の理性を蝕んでいる。幽霊? いや、まさか。だが、この振動はまさしく「存在」を感じさせる。

身体中に悪寒が走る。この深夜の時計の針に憑りつかれたかのような錯覚は、俺の臆病な部分を増幅させる。幽霊の存在を示すサインだ、なんて、馬鹿げた考えが頭をよぎる。しかし、この音の正体を探らずにはいられない。恐怖に包まれながらも、俺は音源を見つけるためにSA内を探り始めた。

音は、どこから聞こえてくるのか。通路の奥、フードコートの裏手、あるいは従業員用の通用口か。しかし、音の方向性が不明確で、どこへ行っても同じように、だが微妙に違う響きで聞こえてくる。まるで、この建物全体が呻いているかのようだ。俺の不安は増幅するばかりだ。この時間感覚の狂いと、身体の倦怠感が、思考をネガティブな方向へと引っ張っていく。頭がガンガンする。

休憩所の片隅に、普段は目立たない小さなドアがある。従業員用の、と書かれたプレートが埃をかぶっている。そこから、ズズズンという振動が、今までで一番強く伝わってきた。意を決して、軋む蝶番の音を立ててドアを開けた。淀んだ空気と、古い紙とカビの臭いが鼻を突く。薄暗い部屋の奥に、何か黒い塊が見えた。

目を凝らすと、それは埃まみれの、古びたシュレッダーだった。壁のコンセントに無造作に差し込まれた電源コードが、その存在を主張している。モーターが、油切れの悲鳴を上げているかのように、不規則な唸り声を上げていた。裁断口には、半端に噛み砕かれた紙切れが挟まっていて、その無理な負荷がモーターを悲鳴を上げさせているのだろう。

なんだ、シュレッダーか。拍子抜けするほどの、あまりにも現実的な結末に、俺は呆然とした。深夜の高速道路のSAは24時間営業だ。大量の文書を管理する必要がある。このオフィスは、そのためのものなのだろう。こんな故障した機械を放置して、しかも電源を入れっぱなしにしているとは。

安堵と同時に、どっと疲れが押し寄せた。深夜の時計の針に憑りつかれたかのような錯覚から解放されたわけではないが、少なくともこの不気味な音の正体が分かっただけ、ましだ。俺は、まるで呪いから解き放たれたかのように、シュレッダーの電源コードをコンセントから引き抜いた。ズズズン、という重苦しい振動が、ピタリと止む。静寂が戻ってきた。だが、俺の頭蓋骨の裏側では、まだ秒針がカチコチと鳴り続けているような気がした。疲労困憊だ。早く、このSAを出なければ。