呼吸を奪う、闇の点滅。

喉の奥に、まるでドロドロの痰が詰まっているような。いや、もっと悪い。見えない巨大な手が、気管を根元から鷲掴みにしているような感覚だ。肺が、無理やり萎んで、もうこれ以上空気を吸うなと悲鳴を上げている。息をするのも怖い。吸えば吸うほど、その見えない手に絞め上げられる感覚が強くなる。喉の奥がヒリヒリして、胃のあたりから酸っぱいものがこみ上げてきそうだ。このレンタル倉庫の空調、やたらと効きすぎなんだよな。夜遅くまでの急な仕事で、身体はもうボロボロだ。こんなクソみたいな体調で、なんで俺はこんな薄暗い場所で荷物の最終確認なんかしなくちゃならんのだ。

薄暗い倉庫の通路で、持ち帰る荷物をリストと照らし合わせながら、何度も同じ項目を指でなぞっていた。集中力なんてとっくに底をついている。俺の頭の中は、今夜の夕食のことと、とにかく早くこの場所から逃げ出したいという思いでいっぱいだった。その時だ。視界の端で、何か微かな光がチカッと瞬いた。

「ん?」

一瞬、気のせいかと思った。疲れ目のせいだろうと。しかし、すぐにまたチカッ、と。今度は少しだけ、はっきりと。それは不気味なほど不規則なリズムで点滅しているように見えた。深海魚の目玉が、闇の底で脈打っているかのような、得体の知れない光。心臓がドクリと大きく脈打った。その衝撃で、喉の奥の見えない手が、さらにグッと力を込めた気がした。息が詰まる。いや、元々詰まっていたものが、さらに奥へ、奥へと押し込まれるような、そんな嫌な感覚だ。

光が消えて、再び現れるたびに、俺の心臓は締め付けられるような恐怖を感じた。それが脈拍とシンクロして、全身の血流が逆流するような吐き気が込み上げてくる。この狭い倉庫の中に、俺以外の何かがいるのか? そんな馬鹿な。ここは警備も厳重なはずだ。だが、この不規則な光は、明らかに俺の神経を逆撫でする。

「くそっ……」

吐き出し損なった息が、喉の奥でヒュッと鳴った。この絞め上げられた状態で、こんな不気味なものに遭遇するなんて、冗談じゃない。全身が冷や汗でべっとりとしてくる。だが、このまま放置するわけにもいかない。俺は、まるで体の中に鉛が詰まっているかのように重い身体を引きずり、一歩、また一歩と、音を立てないように光の方向へ近づいた。足の裏に感じるコンクリートの冷たさが、じっとりと不安を煽る。

光は、倉庫の奥、大きな積み荷の山の間から漏れていた。その薄暗い隙間を覗き込んだ瞬間、光がチカッと点灯すると同時に、微かな、しかし耳の奥を掻きむしるような「チリチリ…」というスパーク音が聞こえてきた。まるで回路がショートするような、生々しい、電気の音。この音と光の組み合わせで、恐怖はピークに達した。喉の奥の見えない手は、もはや俺の気管を完全に潰しにかかっている。呼吸が、もはや呼吸と呼べるものではなかった。苦しい。死ぬ。そう思った。

全身が震える中、俺は意を決して、その積み荷の隙間、暗闇の中に押し込まれるようにして見え隠れしている薄い荷物袋に手を伸ばした。ひんやりとしたビニールの感触。手探りでその袋を掴み、無理やり引きずり出すと、中から出てきたのは、くたびれた警備員の制服だった。そして、その胸ポケットの部分から、微かに光を放つ小型のLEDランタンが顔を覗かせていた。

「…………は?」

息を吐き出すと同時に、喉に詰まっていたものが、一時的にだが、ストンと落ちたような気がした。それでもまだ、奥底にはへばりついている感覚が残っていたが。なんだ、これ。呆然としながらランタンを手に取ると、それは赤外線センサー付きで、暗闇で微弱な動きを感知して点滅する仕組みだと分かった。

警備員の制服。LEDランタン。
――そうか。ここは24時間営業のレンタル倉庫だ。深夜は常時有人警備が行われている。休憩中か、巡回中に置き忘れたんだろう。それが、俺の動きに反応して、不規則にチカチカと。

一瞬、呆然としていた俺は、そのままプッと吹き出した。そして、次第に、情けないような、安堵のような、自嘲のような、そんな笑い声が倉庫に響き渡った。喉の奥はまだヒリヒリするし、この見えない手はまだ完全に消えたわけじゃない。むしろ、こんな情けない状況に陥った自分への嫌悪感で、さらに絞め上げられるような気もする。

俺はすぐにレンタル倉庫の管理者に連絡を取り、事の顛末と、警備員の服とLEDランタンの組み合わせを説明した。管理者は平謝りだったが、俺は笑いながら言った。「いや、いいんですよ。おかげで、深夜の倉庫で突然見つかる謎の光が、なぜこんなにも恐怖を与えるのか、身をもって体験できましたからね」と。
そして、帰りの車の中で、俺はまた喉の奥の見えない手に絞め上げられながら、この話を友人にするのを想像して、また苦笑いを浮かべるのだった。まったく、疲れるぜ。